イオン環境財団寄附講座 サスティナブルコミュニティ論 実績報告



(公財)イオン環境財団寄附講座・現地視察の実施内容

 本講座では春クオーターでの座学を踏まえて「サスティナブルコミュニティ論2」においては、イオン環境財団の植樹地や、大学の地域連携活動の先進地を視察した。視察に際しての重要な視点としては、座学で学んだコミュニティの持続性に繋がる取り組みや、里地里山の魅力を目にすることで、こうした新しいコミュニティや里山の価値を認識し、これを役立てる考察を行おうというものである。

① 千葉県いすみ市(里地・里山・里海、観光、ローカルベンチャー)

 いすみ市では、沿岸の海の恵み、近接する山の恵みが一体的に感じられる場所や産品、人々の営みが見られ、東京近郊という地の利を活かした観光や移住者によるローカルベンチャーの取り組みを学んだ。特に1日目は、「いすみ鉄道」に代表される地域資源を活かした地域活性事業の状況を学び、2日目は豊かな里山景観を視察すると共に、海の幸も味わい、牧場なども訪問し、加えて、背景にある獣害、放置竹林の課題などを学んだ。



②山形県小国町(森林活用、地域文化、ローカルベンチャー)

 小国町では、特に森林資源を活かした活動を視察した。森林バイオマスの利活用として、森林組合の取り組みや、地元の木質ストーブ事業者を視察し、さらにこれらの地域資源を活かした取り組みを行う団体「カモスク」「おぐにマルチワーク共同事業組合」を視察した。また、木工体験や里山の魅力的な宿などの視察を行った。そして、現地の地域の方々や役場の職員の方々との交流会が印象的であった。



③島根県松江・出雲・雲南市(森林経営、植樹、地域文化)

 島根県では、イオンの森で植樹を実施したほか、古来から続く出雲の国の森林経営を学んだ。大規模な森林組合による市民参加の集材、製材事業者「須山林業」の森林育成、集材、プレカット工場などを見学、最後に、最も高級な森林活用の具体例である出雲大社を訪問した。実際に体を動かしながら植樹に参加する機会を得られた貴重な視察であった。



④宮崎県綾町(地域文化、生物多様性、特産品開発、植樹)

 綾町では、貴重な照葉樹林を守る活動の一環として行われるイオンの森づくりの現場を視察したほか、照葉樹林を守るに至った文化的背景などのレクチャーをユネスコエコパークセンターで受けた。また、里山を活かした果樹栽培や有機農業、照葉樹林の恵みを活かした草木染めなどの取り組みを視察した。さらに、近隣のイオンモールとの繋がりなども確認することができた。



⑤北海道厚真町(災害復興、特産品開発、植樹、ローカルベンチャー)

 厚真町では、大規模な地滑り災害から復興する地域再生の取り組みとして地域のベンチャー企業の話を伺い、地域の特産であるハスカップ農園の取り組みを視察した。さらにこれらに寄り添うイオンの森づくりの現場を視察した。そして、本町では町長との対談も実現し、地域課題についてディスカッションを実施した。また、現地の地域の方々や役場の職員の方々との交流会が印象的であった。



対話の実施内容

 本講座では随所にディスカッションの場を設定した。座学における講師との質疑応答、視察先での対話、懇親を行ったほか、視察チームでのプレゼンに向けたディスカッション。イオンピープルとのディスカッションも試行的に行った。特に、イオンピープルとのディスカッションでは、現場の方々にお越しいただき、「イオンの植樹活動は、地域の持続性や新しいコミュニティづくりにどのようにつながるのか?」というテーマでグループディスカッションを行った。学生にとっても参加いただいたイオンピープルにも貴重な場となることが期待される。



プレゼンテーションの実施内容

 本講座の最終成果発表は視察先グループごとの提案発表という形で行った。
グループのディスカッションでは、視察を通じて発見した可能性ある地域資源を整理し、これを視察先地域と大学・イオンの連携で活かす仕組みができないか、新しい価値が創出できないかを検討し、その過程をプレゼン資料にまとめるという取り組みを行った。提案のポイントを端的に示し、これを相関図にまとめる。そして、ロジカルに発表するという実習となった。さらに、最終プレゼンは、イオン環境財団や現地の方のコメントもいただき、学生にとっては刺激的な場となった。
基本的には、企画書作成やプレゼンテーション未経験者もおり、意見を集約することが目標であったため、高度な企画書を求めていなかったが、荒削りながらも、今後の地域の展開の参考になる意見も見られた。視察を通じて現物を視察し、座学では学べなかった地域課題の立体感を感じてのよいプレゼンテーションが見られた。





総括

本講座は座学と現地視察から構成する学部向けの授業科目としては特殊なものであり、受講した学生にとっては得がたい機会を与えていただきました。寄附をいただいた公益財団法人イオン環境財団および、視察先でお世話になった方々に感謝いたします。
コロナ禍でリアルな座学もなかなか行えず、ましてや現地視察の経験も全くなかった学生もあり、本視察がとてもよい経験となり、改めて地域や環境に関心を持つきっかけとなったと思われます。将来、里山に関する学びを通じて、次の社会に貢献する人材となってくれることを期待します。


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早稲田大学
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